きれいな歯並びときちんとしたかみ合わせ、質の高い適正な矯正治療の提供、矯正歯科臨床のたゆまぬ研究・研鑽・伝承を行なう与五沢矯正研究会
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10症例評価
■10症例評価(Ten Case Evaluation)について

  第11回の矯正研究会で、10症例評価(Ten Case Evaluation)についてお話をしたところ、皆様方からの反響が大きかったことから、次回の研究会から10症例評価をスタートさせてみたいと思います。以後、10症例評価についての主旨、内容等についてご説明させていただきます。
  今まで何回か皆様方にお話をしてきましたが、Angle Society は全米に7つのComponent があります。そのうちの一つであるEastern Component では会員資格獲得のためにはオリジナルペーパーの発表に合わせて、これから治療を開始する10症例の提示を行い、最終的にそれらの治療結果に対して評価を受け、臨床能力を認めてもらう必要があります。
  このような評価法は、治った症例を提示するのと違ってコンスタントな臨床能力を問われるもので、かなり厳格な審査といえます。いつからこのような審査基準が設定されたか分かりませんが、Angle Society は Dr. Angle が亡くなった1930年に22人のメンバーによって発表されたものです。
  実のところ、研究会が始まって 5年程してから、研究会をAngle Society のように会員相互が平等に刺激しあう形式にと考えたのですが、しばらくしてそれが無理であることに気づきました。その理由は、私達の矯正環境が未だそこまでいっていないことによるからだと考えました。私達の矯正環境はアメリカのそれに比べると未分化です。未分化の状態は分化した状態と比べて幼稚で未整理の状態かと思いますが、それだけ将来に向けた可能性は大きいというメリットがあります。これまでアメリカは矯正の分野において、良い見本であり先生でもありました。私達はアメリカに目を向けていると常に先端の矯正学や臨床を学べたものです。ところが、この何年かの間に、この先の状態がそれまでと違って昇り方向でなく停滞もしくは下降、言葉を換えれば頽廃の傾向をもってきました。私達に憧れや夢を与えてくれた50年代の華やかなアメリカは、今や多くの犯罪やdrugで悩む国と変わり果てました。これらは一つの文明の末路の表示かも知れません。
  やや話が外れましたが、先に進むということは必ずしも良い状態をもたらすものではないということは自明の理です。良い形で先に進むには、得られる情報の中から何が本質的な情報かを抽出する能力が必要です。本質を見極めるには純粋さが必要かと思います。私達はアメリカの矯正を通じてまだまだ多くを学べます。その学ぶ部分は、現在のアメリカの矯正の体質からではなく純粋に質を求めた時代の矯正にあります。学ぶことが、常に最新のものあるいは先端にあるものとは限らないということを認識すべきです。将来、我が国にも充分に起こり得る可能性を秘めた矯正界の荒廃を避けることができるかどうかは、現在一線で臨床に従事する矯正臨床医そのものにかかっているでしょう。
  矯正臨床に適した時代背景のまっただ中にある私達の正しい行動は、質を犠牲にした効率を考えるよりも質を優先した思考をするべきものと思っています。
  10症例の評価にのぞむ姿勢が、自己を律して励ましとなり矯正臨床医としての自信につながるものとなることを期待しています。

1989年 7月13日
与五沢文夫
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